「美味しい」には幅がある

「馬場香織クッキングサロン」主宰 馬場香織さん

インタビュー連載 第4回

今月ご紹介するのは、東京都世田谷区で「馬場香織クッキングサロン」を主宰する馬場香織さん。 和・洋・中をはじめ世界中のお料理を家庭で簡単に美味しく作れるよう工夫されたレシピとテーマに合わせたテーブルコーディネートを学べるレッスンは大人気で、ウェイティングリストには約200名ものご登録があるそう。 今回は、2017年1月に開催された料理教室の模様と馬場さんのインタビューを4回にわたりお届けします。 最終回は、お教室運営で心がけていることなどをうかがったインタビュー後半です。

掲載日:2017/2/27(月)

馬場香織さん

馬場香織さん

  • レシピ

ご家庭の味を作ってほしい


――今日レッスンを拝見していて、ご説明がとてもわかりやすかったですし、下処理のしかたやちょっとしたタイミングといったお料理のコツがいっぱい詰まっていてとても勉強になりました。また、季節やご家庭に合わせた味の調整のしかたのご紹介が多かったのも印象的でした。

馬場さん  ありがとうございます。お料理は科学的なことが多いので、何が正解、ということは無い思うのです。
時代によっても”正しいとされること”が変わりますよね。例えば、ごぼうは、昔は皮をむいてアク抜きするのが当たり前でしたが、今はアクにはポリフェノールという成分が含まれていることがわかり、アク抜きはしないほうがよいと言われているなど・・・。

――研究の結果、これまでの常識が変わること、ありますね。

馬場さん  そうですね。「美味しい」と思う味を作るには、自分の舌で判断するのが一番なのです。
これまで失敗もして、でもそこから学んでいろいろ考えて、一番美味しいのはこうかな、と思ったものをお教えするしかない、と思っています。

――そのとおりですね!あと、皆さんそれぞれご家庭の味や好みがありますものね。

馬場さん  そうなのです、ここで習った料理をお家で作ってくださるときに、もっと辛めがよいとか固めがよいなどお好みがあると思いますので、ご自分のレシピに変えていってもらえると嬉しいです。


馬場香織先生1

レシピは「これくらいが美味しいですよ」という”基準”。ご自分の舌で美味しいと思うアレンジを。


――今日もレッスンの中で、「今日はこの塩加減で作りましたが、足りないようでしたらおうちでお作りになるときはお塩を足してくださいね」など、おうちの味にアレンジしてくださいね、というアドバイスがたくさんありました。

馬場さん  レシピを用意するために食材や調味料を計量して出さないといけないけれど、あくまでもそれは、”基準としてこんな感じですよ”、という割合なんです。

人が美味しい、と感じる味には幅があると思います。例えば疲れているときはちょっと甘めの味が良かったり、今日はちょと塩気の強いものが食べたい、と思うときもありますよね。空気が乾燥して寒い冬に食べたくなるものと、じめじめと湿気が多く暑い夏に食べたくなるものは違いますし。
ご家庭それぞれの好みもあり、美味しいと感じる味の調節はあくまでもご自分の舌でしていただくのが一番です。

また、食材の状態によっても味付けは変わります。今日は菜の花を使いましたが、収穫してすぐのものを夜にお料理するのでしたらそんなに水分量は減っていませんが、八百屋さんやスーパーにに二日くらい置いてあったものだったとしたら、新鮮に見えても中の水分量は減っていますよね。それに合わせた味付けが必要になります。

ですので、絶対にこのレシピの分量通りに作ってください、ということは決して言いません。

――なるほど、自分が美味しいと感じる味を知ることが必要ですね。

馬場さん  子どもの頃、「学習」と「科学」といって、家に配達される学習雑誌があり、「科学」には毎回実験や観察の教材が付録としてついてきました。
それが楽しみで楽しみで!ベランダに段ボールで小さな部屋を作って、私の研究室、なんて言って、いろいろな実験をしていました(笑)

――知っています!私も大好きで毎月楽しみでした。

馬場さん  いま思うとささやかな実験でしたが、食品と食品を合わせると味や色が変わるなど、子どもの頃はワクワクしました。そんな実験好き、科学好きが料理好きに発展したのかもしれません。

――料理も科学といえますものね。実験で何が生まれるかワクワクする感覚は一緒かもしれません。


シンプル イズ ビューティフル


――長年たくさんの方が通い、支持されていらっしゃいました。お教室運営で心がけてきたことはどのようなことでしょう。

馬場さん  ご家庭で気軽に作っていただきたいので、食材は基本的に身近で揃うものを使うようにし、どこか遠くのお店に買いに行かないとならないものや、珍しすぎるものはなるべく使わないようにしています。
例えば鴨を使うとしても、フレンチ専門のお教室でしたらシャラン鴨を使ったりされるかもしれませんが、ここではスーパーやデパートの地下で入手できる、よくて合鴨、でも鶏肉で代用できるお料理をご紹介しています。

また、一つのお料理に沢山の材料が含まれないようにしています。例えばハンバーグに人参やコーンを入れることなどはしないで、美味しいお肉の味を感じられるハンバーグを作る。
家庭のお料理は簡単で美味しいのがベスト!シンプル イズ ビューティフルです。

――いまも勉強を続けていることや、取り組んでいることはありますか?

馬場さん  日々勉強ですし、様々なお店に食べに行くのも勉強だと思っています。基本的には、プロのお料理人さんの素晴らしいお料理と家庭の料理は違うと思います。ですが、そこから刺激を受けたり、トレンドを知ったり。盛り付け一つにしても、新しい手法を学ぶことができます。
上のものを見るとそこに近づけますよね。自分の世界の中だけに浸っていると、そこで終わりになってしまいます。
それに、お料理は流行もありますし、新しい食材もどんどん出てきていますので、いつもアンテナを張るようにしています。

また、何か新しく取り入れるときは・・・例えば以前タイ料理がとてもはやった時期があり、教室でも取り入れることにしたときは、娘を連れて1週間タイの料理学校に短期留学したり、モロッコ料理をご紹介したいと思った時には、事前にモロッコに飛び料理教室で学んだり。フランスやイタリアももちろんですが、現地に行って現地の食文化や背景と一緒に本場の料理を学んできます。

あ!あと、今年はワインをちゃんと学びたいなと思っています。


馬場香織先生2

「上のものを見るとそこに近づける。自分の世界の中だけだと、そこで止まってしまいます」


――フットワーク軽くいまも学び続けていらして尊敬します。
お教室のほかにも外部でのお仕事も多いようですね。


馬場さん  いま農林漁業の6次産業化や地方創生の一環で食の分野でお手伝いをしていて、北海道や九州など、全国にうかがう機会が多いです。

――それは素晴らしいですね!
お教室をベースにお料理本も多数出版され、様々な食のステージで活躍していらっしゃいます。
これからお教室を始めたい方や後輩の方に、お教室主宰者として必要なことをアドバイスるすとしたらどのようなことがありますか?


馬場さん  そうですね・・。やはり学び続けることと探求心を持つことでしょうか。
例えば、一つの食材を「なぜ入れるのか」。「入れないとどうなるのか」「どう味に影響を与えるのか」といったことに興味をもって調べるなど、昔からの調理法だから入れて当たり前、ではなく、その理由もきちんと知ること。そうすることで生徒さんもしっかりお伝えすることができます。

先ほどお話したとおり、食のトレンドは変わりますし、食材も調理法も変わっていきます。
私が高校生くらいのころはブロッコリーはなかったと思いますよ。野菜も新しいものがたくさん出ていますよね。
新しい情報を得ていくのも大切だと思います。

――探求心が前に進む原動力になりますよね。
最後にこれからの夢や展望を教えてください。


馬場さん  お教室はこのまま、無理のないリズムで続けていきたいと思います。
そして、いま子ども達の食の乱れが広がっている現状にとても危機感を感じています。食を選ぶ力、「選食力」をつけることが、とても大切です。そんな活動にも協力していきたいと思っています。

――食でカラダだけでなくココロも変わると聞きます。日々の食事の大切さを感じます。
これからもまずますのご活躍をお祈りしています。今日は貴重なお話をありがとうございました!


馬場さん  こちらこそありがとうございました!


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家庭での食事をとても大切に考え、料理の楽しさ、自分で感じる「美味しい」という味覚をを知ってほしいとおっしゃる馬場さん。季節や食材、そして「自分の味覚」に合わせて料理を楽しむことができる人が増えたら世界は変わるのではないか、と思うくらいとても力強いお言葉でした。
子どもたちの食の未来を考え、料理や食を通じてできることに積極的に取り組んでいかれるご活動も、これからも一層楽しみです。

インタビュー・テキスト=窪田みゆき写真=原田圭介



レシピ

かにちらし
かにちらし
・すし飯 3合
・炒りゴマ 大さじ3
・のり 適宜
・錦糸卵 卵4個分  ・・・ボールに片栗粉大さじ1と、水を入れよく混ぜ卵を割りとく
・蟹 蟹缶1缶(大)でもよいし、カニのほぐし身でもよい
・甘酢 (酢と砂糖同量 大さじ2ずつ)
・きぬさや 適宜

作り方
  1. すし飯を作り、白炒りゴマをまぜておく。
  2. 蟹缶は甘酢につけておく。
  3. 器に半量のすし飯をよそい、海苔を一面におく。
  4. 残りのすし飯をおき、錦糸卵を広げ、中央に軽く水気を切った蟹を盛り、千切りにしたきぬさやを散らす。
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